昔、音楽をやっていた。
といっても夢を追いかけるというほど入れ込んでいたわけではない。その頃には自分の能力も分かっていたし、そこには半分諦めもあったように思う。
しかし今でも音楽を聴くと何となくせつなくなる。センチメンタルな気持になる。自分の無能に対する悲哀に浸って悦に入っているように思う。何ともさみしいものだ。自分に対するしようもなさだけが、そこにはある。
なんで私は生きているのだろうか。私は音楽が好きだ。しかしいつの頃からだったか、私は音楽から逃げた。自分の実力のなさを自覚したからだし、それに打ちひしがれたからだ。
もう趣味でたまに聞く程度しか音楽との関わり合いはなくなった。それで良かったのだと思う——いや、そう思いたいだけかもしれない。
しようもないぼくに酒だけは忠実だ。裏切らないでいてくれる。ありがとう、と思いながら、今日も酒だけが進む。