ウイスキーしか命を救えない時がある。
比喩でもなんでもなく、私の経験に基づく事実だ。
どうしようもない気分になる時がある。
ここから落ちたら死ぬんだよな、そしたら誰にも迷惑をかけなくてすむようになる、そう考える時がある。
そんな時、私はビルエヴァンスを聞きながら一杯のウイスキーを飲むほかないのである。
本当に死がすぐそこにあるような気持の時である。
夜、誰にも迷惑をかけられない時、もう私にはビルエヴァンスしかないのだ。
彼は麻薬で死んだ。
ほとんど自殺と言っていいのだろう。
そんな彼しか、私のことを救えない時がある。